高すぎる家賃設定に気づかずに失敗した不動産投資事例

高すぎる家賃設定に気づかずに失敗した不動産投資事例

不動産投資に失敗する要因には様々ありますが、よくある理由の一つが「家賃相場の見誤り」です。
本記事では、家賃相場を適切に把握しなかったことが、どのような失敗を招くのかをご説明します。

アパート経営について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

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家賃相場を把握することの重要性

些細な見落としが大失敗につながる

不動産投資を始める際に注意すべきポイントは多岐に渡ります。初心者にはそのどれもが扱い慣れず、苦労させられることでしょう。しかし、そのどれか一つでも見落としたり、正しく扱えなかったりすると思わぬ大惨事へつながりかねません。

そうした注意点の中で、特に家賃相場・家賃設定には注意が必要です。家賃設定は基本的に物件に固有のものです。というのも、物件のあるエリアの需要や開発状況、あるいは物件の築年数や間取りにも家賃設定は左右されるからです。物件の価値を総合的に判断して評価する必要のある家賃は、投資初心者が見誤りやすいものの一つと言われています。

家賃相場の誤解は投資計画を大いに乱します。物件購入時に想定していた家賃収入が減ってしまえば、ローン返済が立ち行かなくなるからです。不動産投資をする際には何千万、何億円規模でのローンを組む場合がほとんどです。本格的に失敗に陥れば破産もありえるため、きちんとした知識を身につけておきましょう。

家賃相場は不動産知識の第一歩

不動産投資において家賃相場を理解するのは重要です。家賃は空室率や利回り、ひいては物件価格の評価にも関わり、不動産投資の要となります。物件の家賃が相場と比べて適正か否かを判断するためには、物件のある場所や築年数、間取りなどの物件に関する様々な情報を総合的に判断することが求められます。したがって、家賃相場を理解しているとき、同時にそれらの情報を総合的に理解しているということになります。

もちろん、不動産投資を始めるにあたって考慮すべきポイントは他にもあります。それらについては以下の記事で紹介しています。今回は多様な注意点のうち、総合的な判断が求められる点で特徴的な家賃相場に注目して、どのような失敗パターンがあるのかを説明していきます。

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家賃相場の見落としで失敗した例

利回りを高く見せかけた不適切家賃

家賃相場に比べて明らかに高い家賃を表示する方法で、しばしば物件の利回りが偽装されます。物件の投資価値を推し量るのに重要な指標である利回りですが、この値は1年間の家賃収入が物件価格の何%になるかを計算したものです。そこで家賃設定を高額に設定すれば、見かけ上の利回りは容易に上昇させられます。利回りの計算に用いる家賃設定にこれといった規制は存在しないため、売れにくい物件をこの方法で優良物件に見せかけ、不動産投資の初心者に売りつける悪徳な業者が存在します。

たった数万円の家賃の違いがどれほどの違いを生み出すのかシミュレーションしてみましょう。たとえば2,500万円の物件で適正な家賃が10万円の物件を想定してみましょう。表面利回りは4.8%といったところです。ここで家賃を2万円上乗せして12万円とすることで、表面利回りは5.76%にまで上昇します。利回り5%を基準にしている投資家に対して、強いアピール力を手に入れます。

たった1%弱の差なら実害はないと考えるかもしれません。しかし実際には、これだけの違いが致命的な事態を招く危険性があります。もし家賃12万円と誤認して投資計画を立ててしまった場合、次のような返済計画が立てられます。

  • 家賃収入 12万円/月
  • 想定諸経費(15%) 18,000円/月
  • ローン金額 2,300万円(利率2.2%、30年、自己資金200万)
  • 返済予定額 87,332円/月
  • 純利益 120,000 −(18,000 + 87,332)=14,668円/月

空室率を想定すればより難しい投資になるため、もう少し自己資金を用意した方がいいかもしれません。収益に対するローン返済比率が高すぎるのも不安です。これらの不安材料を考慮せず投資に踏み切れば、投資は大失敗に陥ってしまいます。

実際に入居者を得られる家賃相場はこれより2万円安いものです。家賃収入の減少に応じて諸経費も3,000円安くなりますが、結果としての月当たりの純利益は次のようになります。

14,668 + 3,000(諸経費の軽減分)− 20,000(家賃減額分)= −2,332円/月

このように、家賃が2万円相場から高く設定されているだけで、本来黒字だった投資計画が赤字に転落します。適正な家賃設定がなされているかを評価し損ねると、以上のような深刻な問題が発生しかねないのです。

長期的な家賃下落の見落とし

また、たとえ初期の家賃設定が相場に即していたとしても、安心してはいけません。地域の需要の変化や建物の劣化を知らないまま、楽観的な家賃相場を受け入れてしまうと、思わぬ損失を被ることがあります。

家賃は時間の経過に伴って必然的に低下します。新築・中古いずれの物件であっても、経年的な家賃低下は避けられません。ローンを組んで投資を行う都合上、長期的な視点から返済計画が適切に遂行可能かを評価することを忘れてはなりません。

ここで先ほどの例より優れた投資物件として、2,000万円で家賃10万円、利回り6%の物件があったと想定してみましょう。同じく自己資金として200万円を用意できたとすれば、次のような利益の計画を描くことができます。

  • 家賃収入 10万円/月
  • 想定諸経費(15%) 15,000円/月
  • ローン金額 1,800万円(利率2.2%、30年、自己資金200万)
  • 返済予定額 68,347円/月
  • 純利益 100,000 −(15,000 + 68,347)=16,653円/月

これもやはり返済額の比率が高いことに不安を抱きます。実際、この計画には見落としている点があります。返済期間が30年と長期にわたっていますが、この計画は暗に30年間家賃10万円を保つことを前提としているのです。家賃が2万円低下すると、以下のように収益計算が変化します。

  • 家賃収入 8万円/月
  • 想定諸経費(15%) 12,000円/月
  • ローン金額 1,800万円(利率2.2%、30年、自己資金200万)
  • 返済予定額 68,347円/月
  • 純利益 80,000 −(12,000 + 68,347)= −347円/月

一般に家賃の低下率は1%と見積もられます。30年経過すれば3万円の下落は想定しなければなりません。したがって、遅くとも20年目からは赤字経営が続いてしまうことを想定しなければなりません。

特に著しい家賃下落が発生するのは、新築から長年継続して入居していた方が退去して新しい入居者が入ったときです。新築時の契約で高額だった家賃設定は、時間経過とともに相場から大きく外れたものになってしまいがちです。このため新しい入居者が入る際には、突然大幅に下落してしまいます。

また、家賃下落については少子化の影響も忘れてはなりません。今は人口増加が続いている東京都心部であっても、2025年前後から減少に転じるとの予測も出されています。住宅需要の低下が見込まれることから、より慎重な投資計画の検討が求められます。

オーナーチェンジの家賃設定

中古物件の中には、すでに入居者がいる状態で取引されるオーナーチェンジ物件も存在します。オーナーチェンジ物件の場合、居住者の賃貸契約が更新されるまで、以前の契約を引き継ぐ必要があります。もしオーナーチェンジ物件で現在の家賃より高額な家賃設定でも入居付けが可能だと説明され、その新設定家賃に基づいて投資計画を策定すると、投資の失敗を招く危険性があります。

さらに条件のよい物件を想定してみましょう。

1,300万円の中古物件で現在家賃が10万円、利回りはおよそ9%です。オーナーチェンジであるためすでに入居者がおり、家賃10万円は確保しています。しかし現在の家賃より1万円は高く設定しても問題ないと聞き、それをあてにして投資計画を設計したとします。同じく自己資金200万円を投じるとすれば、次のように利益の目算を立てることができます。

  • 家賃収入 11万円/月
  • 想定諸経費(15%) 16,500円/月
  • ローン金額 1,100万円(利率2.2%、20年、自己資金200万)
  • 返済予定額 56,696円/月
  • 純利益 110,000 −(16,500 +56,696)=36,804円/月

これまでに比べれば、かなり効率の良い投資に思われます。中古物件であるためローンの返済期間を20年と短くし、家賃の下落についても20年はゆうに耐えることができそうです。

しかし思わぬ落とし穴を見落としています。現在の入居者との家賃交渉がうまくいかず、入居者が退去するという事態に陥ってしまうと、この計画は大いに狂わされます。もし交渉が決裂し入居者が途中退去になったとしても、家賃引き上げを要求したオーナー側に責任があり、入居者は違約金などを支払う必要はありません。もともと確保していた10万円の家賃収入さえも失ってしまうと、途端にローン返済分の赤字が発生します。

加えて、こうした交渉の末の退去は、入居付けしやすい年度末の時期を逃してしまう危険性があります。そうなれば、実際に11万円で入居付けが可能だったとしても、年度末までは入居者を得られない可能性も生じます。結果として、数ヶ月の赤字では済まない1年間70万円ほどの赤字を覚悟しなければなりません。この額はおよそ1年半分の純収益にあたるため、合計して2年半を無駄にしたことになってしまいます。

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家賃相場の調べ方

家賃に関わる三つの失敗例を紹介しました。家賃相場を見誤るだけで、不動産投資が大きく失敗に傾いてしまうことがお分かりいただけたかと思います。極めて重要な家賃相場の見積もりですが、不動産投資初心者にとって適切な家賃相場を見極めるのは難しいことかもしれません。そこで最後に、家賃相場を調べる簡単な方法を整理しておきます。

類似物件との比較

最も手っ取り早く、信用できる調べ方は、購入を検討している物件の付近にある、似た条件の物件と比較することです。もしその物件の空室率が低く止まっているなら、それが最も参考になる家賃設定と言えます。しかしあらゆる条件が似通った物件が近傍に存在する場合ばかりではありません。

そこで物件の要素をいくつかに分解して、家賃の想定をしてみる方法があります。このとき一つの変数に基づいて類似物件を整理するとよりわかりやすくなります。たとえば、最寄り駅までにかかる時間を変数として同じタイプの物件の家賃を比較してみると、家賃相場の概観を把握することができます。あるいは同じエリアの類似物件について、築年数だけを変数として比較すると、また違った相場の概観が見えてくるはずです。その他の項目としては、間取り、階、物件がある街の大きさなどを活用することができます。

不動産情報サイトの参照

また、不動産情報サイトの中には、エリアや最寄り駅別の家賃相場を検索できるものがあります。それらのウェブサイトで購入予定の物件のエリアを検索するだけで、一応の家賃相場を確認することができます。

不動産情報サイトは最も容易に家賃相場を知ることができる手段ですが、決して万能ではありません。掲載されているのは築年数や間取り、最寄り駅までの距離など細かい情報に基づいた家賃相場ではなく、あくまでエリアの平均的な相場です。購入予定の物件の適切な家賃設定を知りたい場合には、あくまで参考程度に止めるべきでしょう。

家賃相場は継続して確認を

ただし、これらの方法で家賃相場を把握したから問題がなくなるわけではありません。先ほどの失敗例にもあったように、家賃相場は中長期の変動も常に観測する必要があります。特に退去の予定が決まれば、家賃相場を必ず再確認しましょう。家賃設定が高ければ入居者を得にくく、逆に安過ぎれば利益が損なわれます。なるべくこまめに情報を集めることで常に変動する家賃相場を細かく把握し、適切な家賃設定をしていきましょう。

まとめ

家賃相場の見極めは不動産投資の成否を握る重要な要素です。家賃相場の見誤りは利回りの誤解に繋がり、赤字経営の原因となってしまいます。また、築年数を重ねるごとに家賃が下落していくことを見落せば、数年後に赤字経営に陥ってしまいかねません。

他にも家賃設定は入居者の獲得も左右します。このため手間の多い作業ではありますが、家賃相場の見極めは定期的に行って、自らの投資計画を常に更新するよう心がけましょう。

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