【 目次 】
不動産投資家の方の中には、マンション投資を行っている方も多くいらっしゃると思いますが、同じマンションという括りであっても新築マンションか中古マンションかによって利回りは大きく異なります。そこで今回は利回りの違いに注目しつつ、それ以外の違いも含めて新築マンション、中古マンションのメリット・デメリットを解説していきます。
新築マンションと中古マンションの利回りの違い
新築マンションと中古マンションとでは利回りが大きく異なります。また、同じ地域であっても新築か中古かによって利回りが違ってきます。ここでは東京エリアを例にとって具体的に比較してみましょう。
不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」による2018年10月から12月にかけての市場動向調査を用いて比較します。東京23区の区分所有マンションについて、中古物件の利回りは築10年未満で4.77%、築10年以上の物件で5.12%、築20年以上の物件で6.71%となっています。築年数が経過している物件ほど高い利回りになっているということがはっきりと読み取れます。なお、全国の区分所有マンションの平均を見てみても、築10年未満で5.29%、築10年以上の物件で5.73%、築20年以上の物件で9.30%と同じ傾向が見て取れます。
一方、新築マンションに限定したデータはありませんが、東京都内であれば利回りは3%台から高くても5%というのが実際の相場です。築10年未満の物件が4.77%と同水準ですが、それを除けば利回りは相対的に低くなります。
このように、同じ東京エリアであっても新築マンションか中古マンションかによって利回りは異なります。提示される利回りだけを考えれば、中古マンションの方が利益を得やすいと感じられるかもしれません。しかし、利回り以外にも新築マンションと中古マンションには違いがあり、それらも含めて慎重に検討する必要があります。
新築マンションのメリット・デメリット
新築マンションのメリット
- 少ない自己資金で購入できる
新築マンションのメリットの一つに、少ない自己資金から購入できるという点が挙げられます。後述しますが、新築マンションは中古マンションと比べると物件の価格自体は高額になりがちです。しかし、新築の投資用の物件を購入する際には購入金額の100%に当たる額の融資を受けられる場合もあるなど担保としての評価が高いため、少ない頭金で購入することもできます。その点、中古の物件では金利や借入条件・返済期間などの面で不利になってしまうこともあります。
- 最新の設備が設置されている
二つ目のメリットは、新築マンションには設備の面で最新のものが設置されているという点です。築10年、20年を超えている中古の物件となると、リノベーションなどをしていない限り備え付けられている設備も一昔前のものとなっています。近年であれば防犯意識の高まりから監視カメラやオートロックなどの防犯面で効果のある設備が人気になっており、また設備には時代ごとの流行もあります。設備の充実度は入居者が物件を選ぶ際のポイントでもあり、入居率にも直結するため、大きなメリットと言えるでしょう。
- 「新築プレミアム」を生かせる
また、「新築プレミアム」と呼ばれる新築物件の価値を生かして、様々なメリットを享受することも可能です。例えば、新築というだけで入居需要も大きく増加するため、家賃を相対的に高く設定することができます。
- 維持コストを抑えられる
最後に紹介するのが、維持コストを抑えることができるという点です。中古の物件であれば建物自体の老朽化が想定され、購入してすぐに設備の更新やリフォームなどの維持コストが多く発生する可能性もあります。それに対し、新築の物件であれば購入後しばらくはリフォームや修繕などを行う必要はなく、維持コストを省くことができます。物件の価格自体は高額ですが、それ以外の諸費用も含めて評価する必要があるのです。
新築マンションのデメリット
- 利回りが低い
一方で新築マンションのデメリットとしては、やはり利回りが低いという点が挙げられます。一般的に不動産会社などで提示される利回りは表面利回りと呼ばれ、年間の家賃収入を物件の購入価格で割った値に100をかけることで算出されます。物件価格が高くなればそれに応じて表面利回りが低下するため、購入価格が比較的高くなる新築物件は利回りが低いという特徴を持ちます。もちろん家賃は中古物件よりも高く設定されることが多いものの、経営が順調になった場合の利益回収ペースは中古物件には劣ります。
- 物件の価格が高い
利益回収が遅れる以前の問題として、しばしば物件価格の高さは購入をためらう理由に挙げられます。先ほど不動産投資ローンを活用することで自己資金がほとんどない状態でも購入することができると紹介しましたが、ローンが購入価格の問題を完全に解決するわけではありません。利回りとローン返済計画が健全な関係を保てるという見通しがあってはじめて、この課題を克服することができます。
中古マンションのメリット・デメリット
中古マンションのメリット
- 利回りが高い
中古マンションのメリットとしては、利回りが高いという点が挙げられます。先述した通り、中古マンションの家賃はそこまで高くはないものの、購入価格が低いため表面利回りは新築マンションよりも比較的高い水準になります。ただしリフォームなどの諸費用が発生し、結果的に実質利回りは低くなってしまう可能性もあるため、事前に十分確認しておくようにしましょう。
- 物件の価格が低い
中古マンションの二点目のメリットは、物件の価格が低いという点です。もちろんエリアによっても価格は異なりますが、一般的に少ない資金から投資を始めることができるため、投資の心的なハードルが低いという特徴があります。また、一つの新築物件に投資するのと同じ資金で複数の中古物件を所有することも検討できます。そのため、複数所有によりリスク分散を行いたい方にとっても有力な選択肢となるでしょう。
- 入居状況を確認して購入できる
三点目のメリットは、入居状況の実績を確認して物件を購入できるという点です。新築マンションではまだ入居者が存在しないため入居状況などは同地域の同じような物件を参考にするしかありません。しかし中古マンションでは物件の購入前に入居状況がわかるため、購入の判断に役立てることも、家賃収入などを計算して物件の運用計画を立てる際の参考とすることもできます。
中古マンションのデメリット
- リフォームなどの諸費用が必要になる
一方で、中古マンションのデメリットとしては、物件の購入価格以外にもリフォームなどの諸費用が多く必要になる可能性がある点が挙げられます。先述した通り中古マンションは建物の老朽化が進んでいることから、新築と比べると早い段階で修繕が必要になると予想されます。そのため表面利回りは高くても、諸経費なども考慮に入れた実質利回りが低くなる場合があることを知っておきましょう。また、購入時までにすでに築年数が経過しているため、運用できる期間が短いという点も併せて押さえておきましょう。
- 耐震性の確認が必要
中古マンションのデメリットの二点目は、耐震性の確認が必要であるという点です。1978年に発生した宮城県沖地震などをきっかけとして、1981年に日本の耐震基準は大きく改正されました。そのため改正前に建てられた物件は旧耐震基準、改正後に建てられた物件には新耐震基準が適用されており、耐震性が異なっています。地震の際などに建物が受ける被害をなるべく少なくできるように、仮に中古物件を購入する際には耐震性を確認しておくことが重要です。
詳しくは「新耐震基準と旧耐震基準の違いは?大地震には耐えられるの?」をご参照ください。
- 瑕疵担保責任が免責となることも
最後に紹介するのは瑕疵担保責任です。瑕疵担保責任とは売買した物件に外見からはわからない欠陥があった場合に、売主が買主に対して負う責任のことを指します。万が一欠陥があった場合、買主の損失を帳消しにする可能性もある重要な制度です。しかし、中古物件の売買では売主が個人であることも多く、瑕疵担保責任が免責となる契約もあり得るため、修繕費を自己負担することになる可能性があります。
詳しくは「瑕疵担保責任、隠れた瑕疵とはどんなもの?2020年4月民法改正の内容も解説」をご参照ください。
ワンストップ型リノベーション
ワンストップ型リノベーションとは何か
近年「ワンストップ型リノベーション」と呼ばれるシステムが注目を集めています。ワンストップ型リノベーションでは、物件探し・物件購入からリノベーションの設計・施工までを一社で行うことができるというシステムです。
前項で触れたように、中古マンションでは物件価格は安いものの、購入後に修繕費などの諸費用が必要になるという点がデメリットとして挙げられました。中古物件の経営を一社で完結させることができるため、費用の見積もりの面でも目算を立てやすいほか、修繕のために異なる会社と交渉するなどの手間も省いてくれます。
ワンストップ型リノベーションは利便性の面では非常に優れています。しかしデメリットもいくつか存在するため、これについてもメリットとデメリットを整理しておきます。
- ワンストップ型リノベーションのメリット
ワンストップ型リノベーションのメリットとしては、まず利便性が挙げられます。通常であれば物件探しや物件購入のために不動産会社へ行き、リノベーションの設計のために専門の業者や建築家に相談し、工事は工務店や施工会社に依頼する必要があります。しかしワンストップ型リノベーションでは一連の流れを一つの会社で済ませられます。
これにより実現するのが、予算バランスの調整です。不動産会社と工務店それぞれが最大の利益を得ようとすれば、物件価格がリノベーション予算を圧迫したり、逆にリノベーション費用が物件購入費用を圧迫したりします。一つの窓口でこれを行うことができれば、物件購入の費用とリノベーションの費用を適切に調整することができます。
- ワンストップ型リノベーションのデメリット
ただし、ワンストップ型リノベーションのデメリットとして、自分の希望通りのリノベーションができない可能性があることは知っておきましょう。不動産会社で物件購入からリノベーションまでを行う場合、不動産会社はあくまで物件の販売が利益の源泉です。予算バランスの調整に際しても、不動産価格が相対的に大きくなるように誘導するインセンティブを持っています。また、物件購入後になって様々な制約が発覚することもあります。そうしたデメリットがあることも把握したうえで、慎重に信頼できる業者選定を行うようにしましょう。
まとめ
今回は利回りの違いという観点から中古マンションと新築マンションのメリット・デメリットを整理しました。利回りの他にも、ローンの組みやすさや修繕費の発生など、新築と中古は多角的に評価して比較する必要があります。また、中古物件ではワンストップ型リノベーションという手法も利用されるようになりました。物件の購入を検討されている方は、様々な選択肢を検討するように心がけましょう。
不動産投資にありがちな5つの失敗パターンが気になる方は、以下の記事もご覧ください。
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