2020年3月期を終えて

~外部環境悪化の中、創業以来の17期連続増収増益を達成、過去最高益更新~

代表取締役社長 中西 聖

2020年3月期は、米中貿易問題や中国景気への懸念から世界的に経済の減速感、先行き不透明感が続く状況の中、新型コロナウイルスが発生、世界的な流行へと拡大し、世界経済はリーマンショックを超える大幅な落ち込みとなりました。国内においても、新型コロナウイルスの感染拡大防止が最重要事項となり、企業収益悪化、個人消費及びインバウンド消費低迷などあらゆる面で景気後退局面へ突入しました。新型コロナウイルスの影響により、東京オリンピック・パラリンピックも延期が決定したものの、この需要のほとんどは発現済みのため、影響は限定的との見方になっています。これらに対し、日銀は2020年3月の金融政策決定会合を前倒して、企業金融支援のための措置やETF・J-REIT買入の増額などを決定し、また、2020年4月には経済の下支えのため、国債の買い入れ上限をなくし、積極的に購入する方針を決定する追加緩和策をとるなど、政策を総動員する状況となっています。

不動産業界も、新型コロナウイルスによる外国人旅行者の大幅な減少によるインバウンド消費の低迷や外出自粛により、宿泊業や飲食業などは厳しい状況となり、これに紐づくホテルや商業施設などのオペレーショナルアセットは収益性が極端に低下する状況となっています。また、レジデンスも少し前からのファミリーマンションや戸建ての不調が更に悪化している状況となっています。このような結果として、首都圏の2019年度(2019年4月~2020年3月)のマンション供給戸数は前年度比22.0%減の28,563戸と1992年以来の3万戸割れとなりました。ただし、都区部のそれは、15.0%減の13,131戸となっており、首都圏エリア内においては、減少率が一番小さい状況となっています。これら供給面に対し販売価格の面においては、首都圏エリアの平均価格は2.2%上昇の6,055万円、㎡単価も3.0%上昇の90.1万円と平均価格は3年連続、㎡単価は8年連続のアップという結果になったものの、都区部は平均価格1.1%増の7,400万円、㎡単価は0.9%減の115.1万円と高止まっています。しかしながら、このような状況においても、投資用マンションの領域においては、引き続き、低金利の恩恵や景気に不透明感があるからこその実物投資としての投資商品認知度の拡大、賃料の堅調さなどを背景に好調を維持しており、これに必要な投資用ローンも変わらず攻勢となっています。特に賃料は、株式会社東京カンテイが集計を開始して以来、初めて首都圏の分譲マンション賃料が㎡単価3,000円を突破し、その中でも都区部の伸びが著しい状況となっています。

このような状況の中、当社は引き続き立地を厳選した事業活動を継続しており、開発物件の立地優位性、堅調な賃料、投資商品としての認知度拡大などから販売価格を伸長しつつも順調に販売量を維持出来ました。加えて、全社員のコスト意識改革に成功し、これにDX(デジタル・トランスフォーメーション)プロジェクトも貢献し、売上高を伸ばしながら、販管費を削減していくことができ、これらの結果のもと、期初には難しいと想定していた創業以来の17期連続増収増益を達成することができたと考えています。

~外部環境に対し的を射た事業方針~

2019年5月のメッセージにおいて、金融環境や不動産市況等の不透明感が非常に強くなってきていることから、これらを総合的に勘案し、「堅実性と将来の成長性確保」という方針に転換する、いわゆる“足踏みダイエット”をすることについてお伝えしました。また、2019年11月のメッセージにおいて、“足踏みダイエット”から“登頂ダイエット”へ方針を転換した際も、当社が進む登山道は、脆く、崩れやすいことも間違いないため、財務体質の強化と市況変動リスクへの耐性強化を引き続き実施し、登る道に気を付けなければならない旨をお伝えしました。この方針の背景等は、以前JapanStockChannelにてお話させていただいているので、該当動画のリンクだけご案内しておきます(2019年4月19日収録)。
https://youtu.be/1mbJbsIm1Do

当社では、これらの方針のもと、2019年3月よりバランスシートの圧縮やストックビジネスによる利益のシェア拡大、コストのスリム化を優先し、財務体質の強化と市況変動リスクへの耐性の強化を図ってまいりました。その施策の一つとして、中古物件の買取再販事業を強化しましたが、これによる販売収益、ストック収益の拡大が大きく貢献しています。また、流動性の高い完成在庫を増やしつつも自己資本比率を増加させるなど、財務体質を強化したことにより、金融機関から融資先として選ばれるポジショニングを取ることができ、当社における調達環境は、この環境下においても大きな打撃を受けていない状況となっています。新型コロナウイルスによる不確実性の増加により、今後金融機関も貸出債権の毀損に不安を抱き、これを起因とした融資姿勢後退の可能性は否定できない状況と思われます。この後退局面においても、選ばれるポジションにい続けるのは、十分な自己資本やキャッシュポジション、資産の内容(無担保高利回り収益不動産の保有)といったバランスシートの状態、ストック収入による販管費のカバー率といった収益構造によるところになるのは間違いないと考えています。

コストのスリム化についても、生産性の向上と並行して非常にドラスティックに取り組み続けています。その代表的なものが2019年5月に専門チームを発足しスタートしていたDX(デジタルトランスフォーメーション)の全事業的な推進となります。2019年度期初より本格的に開始したDXの推進ですが、ここ1年半ほどで時系列に追いますと、現在までに下記のようなオンライン化や効率化等に取り組んでいました。

2018年11月 社内稟議・申請書の完全電子化、
社内コミュニケーションのメッセージツールへの移行
2018年12月 地方顧客へ初めてのzoomを使ったオンライン商談実施
2019年5月 DX推進チーム発足
2019年6月 電子契約の導入検討開始
2019年10月 国土交通省が実施するIT重説社会実験に選出され参画
2019年11月 電子契約導入完了
2020年1月 不動産特定共同事業の電子取引業務の認可取得
2020年2月 社内PCのモバイル化移行完了、社内固定電話の廃止・スマホ化移行完了
2020年3月 採用時履歴書・職務経歴書の電子データ受領化移行

DX取り組み事項

このように当社では、従前よりリモート環境で生産性を維持・向上して働くことができる環境の構築に注力し、その環境がほぼ整った状態であったことから、現在のこのような外部環境においても適応できています。また、このDX推進の成果として、工数、コストの削減を実現することが出来たことは言うまでもないことです。結果として、これら昨年来からの事業方針が現在の外部環境に対し、的を射ていることにより、現在の当社のポジションがあるということを確信しています。

~不動産×DXの真骨頂「Rimple」、非常に順調なスタート~

これまで不動産投資と言えば、紙面による重説や契約、登記移転などにより不動産を購入することで行うことがメインであったと思います。そのような中、スマホ片手にオンラインで不動産投資が出来る不動産投資型クラウドファンディングは、ある意味不動産×DXの真骨頂の一つではないかと考えています。当社が、2020年2月にサイトオープンした不動産投資型クラウドファンディング「Rimple」は、2020年3月に初号ファンドを募集し、応募金額は、募集金額の10倍をはるかに超える結果となりました。2号ファンドにつきましても5倍超の応募があり、順調なスタートを実感するとともに、この商品のニーズの強さを実感しているところであります。「Rimple」は、スマホ片手に投資が出来ることをコンセプトに、ネット完結型の商品となっています。このような非対面形式を実現していることもあり、また、ビジネスパーソンが昨今の状況で在宅勤務をすることが非常に多くなり時間に融通が利くこともあってか、登録ユーザー数は直近で4万人を超え、順調にユーザーを確保できている状況にあります。当社といたしましては、不動産投資の認知度拡大とともに、今後は、不動産投資をスマホ片手に手軽に、かつ、身近に、簡単に行う時代が必ず来ると考えており、当社がその第一人者になるという思いに変わりはなく、今後もこの事業の発展をいろいろな形で模索していく所存でいます。

RIMPLE 累計登録ユーザー数 4.8万人

今後の方針

~リスクは厳しく見積もりつつも”登頂ダイエット”継続~

収益不動産の価格形成に大きな影響を与えるのは、賃料と金利になり、そのうち金利については、長期金利が一つの指標となります。長期金利は、3月に現金需要の高まりなどから、国債が売り優勢となったことを受け、高水準まで上昇するも、景気悪化懸念を受け、再び低下し、この先は、新型コロナウイルスの収束次第ではあるものの、主要中央銀行の金融緩和姿勢の維持とそれを受けた各国長期金利の低位安定を背景に当面は現在の水準が続く見通しであると考えています。また、不動産市況を左右するマインドは景況感に左右されますが、国内が景気回復に転じるのは、新型コロナウイルスの流行状況に左右され、政府の感染拡大対策が効果を発揮し、早期に収束すれば回復軌道に復帰する見通しも立ちますが、早期に回復軌道に転じても、インバウンド需要や貿易活動が元の水準に戻るには、時間を要する見込みであり、個人消費も所得環境の悪化が重石となり、緩やかな回復ペースになるのではないかと考えています。ただし、新型コロナウイルスは厄介なウイルスであり、ワクチンや薬の開発、生産には時間を要することから、長期にわたるとの想定のもと、如何に現在の状況においても経済活動を維持するように出来るかが、非常に重要なことであると考えています。このような外部環境分析から、当社では、引き続き登頂を諦めず“登頂ダイエット”という方針のまま事業を継続する方針ではありますが、今はその山頂アタックのタイミングを計りながら高所トレーニングを行う、つまりは、ヒト(組織や働き方)、モノ(資産性の高い物件の調達)、カネ(資金水準と資金調達力)、情報(DXによるダイエット及び情報活用力)の強化を図るときではないかと考えています。

~リーマンショック、東日本大震災の時も不良在庫無~

業界全体としては、用地価格の高騰などの影響により新築供給数は減少傾向にあり、中古の取引が活発になっていたものの、不動産業への警戒感や一昨年来の不動産投資における一部の金融機関や不動産業者の不適切融資問題に加え、新型コロナウイルスの影響で、業者の選別は厳しくなっており、中古の買取能力にも優劣がついてきている印象があります。しかしながら、足許ではホテル開発の縮小などにより開発用地の仕入情報が少し増えてきている印象もあります。当社といたしましては、この仕入情報力と開発力を最大限に活かした新築物件の開発及び販売増加と資金力を主とした中古物件の買取及び販売増加の両輪で引き続き“登頂ダイエット”を続けていく方針でいます。ただし、新型コロナウイルスによる不確かな状況だからこそ、最終的には、立地とその開発費の低減が重要であると認識し、新築、中古問わず、立地と買値の見極めだけは厳しくしていく方針でいます。

~アフターコロナに向けた働き方2.0、DX2.0へ~

新型コロナウイルスはその感染が拡大し、ワクチンや薬の開発・生産が進むまで、しばらくはこれと如何に付き合っていくかという状況が続くことかと思います。しかし、いずれこれも収束し、アフターコロナの世界になっていくはずです。これまで多方面で働き方改革が叫ばれ、推進されてきたかと思いますが、今回のことを契機にその改革は更なる進化を遂げ、より効率よく、生産性を落とすことのない働き方2.0へ移行していくのではないかと思っています。そのために当社ではこういった想定に対し、以前から力を入れていた組織力の強化と新しい働き方への取り組みをより一層推進していく方針でいます。また、昨年来より推進しているDXは、工数、コスト削減に注力していましたが、これからはアップサイドの付加価値創造領域へ突入する必要がある、つまりはDX2.0へ進化する必要があり、これに徹底的に向き合い推進していく方針でいます。

終わりに

~創業以来の18期連続増収増益を目指して~

当社といたしましては、今後も低金利の恩恵は継続する見通しであり、賃料も堅調であることから、当社商品は魅力が強く、ニーズは底堅いものがあると想定しています。ただし、2020年度につきましては、当社としての販売体制、在庫準備という点において、増収増益を目指したものに出来ているものの、現段階においては、不確実な要素が多く、慎重にならざるを得ない状況となっています。この不確実性に対し、当社では第3四半期くらいには回復基調へ転じるという楽観シナリオから、年度内は新型コロナの影響により回復基調にまでは転じないという普通シナリオまでを想定し、通年の販売量や市況のシミュレートを行った上で業績の予想を立て、売上高を222億円~247億円、営業利益を15億円~20億円としました。もちろん、この想定を上回る悲観的なシナリオとなった場合には、この限りではないですが、それでも当社は、リーマンショックの時も、東日本大震災の時も継続してきた創業以来の増収増益を途絶えることなく、18期連続の増収増益を目指していきたいと考えおり、社員もこの難局に一丸となって立ち向かっています。なお、今はこの不確実性に備える観点から配当予想については、一旦据え置きとし、内部留保を重要事項とさせていただきたいと考えています。これにつきましては、業績が順調に推移し、創業以来の18期連続の増収増益が見込めるようになった時には、増配もしっかりと検討していく所存ですので、何卒引き続きのご支援を賜りたく、宜しくお願い申し上げます。

2020年5月

代表取締役社長
代表取締役社長 中西 聖

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